タスマニアで持たない暮らし: 手作りの小屋でサソリのいる生活
みなさんはWWOOFというものをご存知でしょうか?
簡単に説明すると、
- 《ホスト》ウーファーに無料の宿泊場所と食事を提供
- 《ウーファー》ホストに労働力を提供
- お金のやり取りは一切なし
- ホストはオーガニックファームなど環境や人に優しい取り組みをしているところが中心
- ウーファーも農業を学びたい人やオーガニックに興味のある人が多い(もちろんただ寝床と食べ物が欲しい人も)
というようなしくみです。
宿泊先と1日3食の食事(食料)は用意されるため、こちらが必要なのはスーツケースひとつと体力とやる気です。
私がWWOOFをしたのは数年前のオーストラリアなので、他の国では少し事情がちがうかもしれません。
当時の日記をもとに書いていきますが、長くなると思うのでシリーズとして何回かにわけてゆっくり更新していこうと思います。
手作りの小屋でサソリのいる生活
しばらく住んだメルボルンに別れを告げて、オーストラリアの北海道ともいうべきタスマニアにやってきた。
タスマニアの州都ホバートから車でおよそ一時間。
ファームから最寄りの町まで移動し、ホストのジュールスを待つ。
私が住んでいたメルボルンとは打って変わって、アジア人をみかけない。
旅をしているような気分になるのは久しぶり。
しばらくすると、黒いピックアップが待ち合わせの場所に停まった。
すこしドキドキしながら、スーツケースを引きずって車に近寄る。
すると、車から背の高いショートヘアの女性が降りてきた。失礼ながら、一瞬男の人かと思った。
「WWOOFのMaja?ジュールスだよ」
にこやかに握手を求めてきたジュールス。WWOOFのリストに載っていたのは男の人の名前だから、てっきり男の人が来るかと思っていた。
あとから聞いた話によると、本当の名前はジュリーだけどしっくりこないから変えたらしい。
私のスーツケースを軽々と持ち上げて荷台に乗せた彼女は私を車に乗せると、彼女の飼い犬を紹介してくれた。
バスターは黒のラブラドールのオスで、とてもおだやかな子。
ティー(T)はやんちゃな女の子で、名前のTはタスマニアのTなんだとか。世話もされず鎖に繋がれていたのを、ジュールスが引き取ったそうだ。
今では広い敷地内を自由に走り回っている。
彼らは鎖に繋がれることも、檻の中に入ることもない。家に入るも外で走り回るも自由だ。
ファームにつく間、ジュールスは今の時期の仕事の内容をおしえてくれた。
- 自給自足のための畑作り
- ビニールハウスで育てている苗の管理
- 自分たちとご近所に配る分のはちみつのための養蜂
- たまごのためのにわとりの世話
- にわとりや作物を他の動物から守るためのフェンス作りと補修
- 敷地内の芝刈りと畑の雑草むしり
などなど。
これらのことを月曜日から日曜日まで、毎日4時間程度するそうだ。朝早くから働いて、午後はほとんど自由時間らしい。
売り物にするのはブルーベリーだけで、あとは自給自足用。たくさんとれたらご近所さんにおすそわけするらしい。
なんかいいなあ。故郷の近所のおばさんたちを思い出した。
ジュールスの収入源であるブルーベリーの収穫は、まだしばらく先になるそうだ。
今は自給自足用の畑やフェンス作りなどを済ませたいらしい。
車に乗ること数十分、徐々に建物は少なくなりついには山の中に入っていった。
坂道をのぼる手前には、郵便屋さんのために山の中にあるのであろう数件のおうちのポストがまとめてならべられている。
それぞれユニークなデザインだ。ブタに仏像に‥なんだかほほえましい。
砂利道を少し進んだところに、やっとファームの看板がみえた。
これから3ヶ月、お金のやりとりのない生活をする。
私が提供する労働力とひきかえに、ジュールスから寝るところと食料をいただく。
周りにはスーパーもコンビニも自動販売機もない。普通の街にあるような娯楽もない。お金があっても何にもならないのだ。
すこし気を引き締めて車から降りた。
数日前からオーストラリア人男性と今日から私とはまた別の日本人女性のウーファーがきたらしく、しばらく日本人と接していなかった私はそわそわ。
ジュールスが自分で作ったというウーファー用の小屋に入る。
他のウーファーたちに挨拶をし、ジュールスに案内されるまま寝室へ。
女性と男性で部屋が分かれていて、それぞれの部屋に2段ベッド がいくつか並べられている。
女部屋は2段ベッド2つと、カーテンで仕切られた奥の部屋にダブルベッドが1つあった。
私は空いていた2段ベッドの下の段を使うことにし、ベッドの横にスーツケースを置く。
落ち着いたら他のウーファーたちとジュールスの家まで来るように言われた。
とりあえず、スーツケースの中からファーマーズブーツと、愛用のウィンドブレーカーをとりだした。
話に聞いていた通り、タスマニアは寒い。
もちろん地元の北海道ほどの寒さではないが、手作りなだけあって小屋の中もなかなか寒い。
(北海道の人間は屋内が寒いことに弱いと思うのは私だけだろうか。)
寝室をでてロビーに行くと、他のウーファー2人がソファに座って待っていた。
少し小話をしてから、靴を履きジュールスに会いに行く準備をする。
これから生活をともにすることになる、オージー男性イヴァンが言った。
「靴を履くときは必ず靴の裏を叩いてから履きなよ。たまにサソリが中で寝てるからさ」
つづく。
ランキング参加してみました。